おや、お客様でいらっしゃいますか?
これはこれは…、ようこそお越しくださいました。
はい、申し遅れまして、私はこちらでお客様のご案内をお引き受けしております、縞猫のミケジと申します。以後お見知りおき下さると幸いでございます。
「猫が喋ってる」…でございますか?
かようなお言葉を頂戴するのは二度目にございます。
もうどのくらい昔になりますか…以前ご案内申し上げた御仁も、初めてお会いしたときは左様におっしゃられました。
せいたかみみなし猫種様がたの初対面の挨拶のお言葉なのでしょうか?
いやはや、興味は尽きませぬ。
お時間の許すときに、何ゆえかような言葉になったのか、由来をゆっくりおうかがいしたいものでございます。
字面通りの意味ですと「我々が喋っている」…で、ございますな…ふーむ、奥が深いですにゃ。
これほど挨拶の内容に違いがあるとしますと、あなた様もかの御仁のように、とても遠いナワバリからおいでになられたのでございましょう。
帰り道…でございますか?
申し訳ございません、私はここでずっとお客様のご到着をお待ちしなければならないので、あなた様がどの道をお通りになってこちらにいらしたのか、存じ上げておりませぬのです。
あなた様のいらした方向の先ですか?
ずっと森が続いておりますよ。
この森の深さは、私どもでも、今だ把握しきれておりませぬ。
それにしても、長い道のりでさぞお疲れでございましょう。
少し歩いた先に、ごゆっくりしていただける場所がございますので、ご案内いたします。
お疲れのところ申し訳ありませぬが、もうしばらくご辛抱くださいませ…